セーリング 世界選手権
wrote by ueno

 この1週間は多くの課題を僕らに残し、瞬く間に過ぎていった。今回のワールド参戦の課題は、まず自分自身の経験を積むこと、そして世界のトップレベルを体感して来ることだった。サンフランシスコの海は、出発前から風と潮が強い事をしばしば聞いていた。しかし、予想以上の潮流に、初日から苦戦を強いられた。
第一レースは8〜9ノットの風でスタートとなり、全体的にへこみ気味の中ベストスタートを決めて飛び出していった。潮は風向より右40°ぐらいから流れていた。要するに、ポートタックで帆走しててほぼ正面から来るのである。そうなると、全艇潮流が弱い左の岸を目指して一直線に進む。
僕達は、一気にポートのレイライン付近まで左に伸ばしタックを返した。このあたりでだいたい5位前後。しかも多く全艇が左に集まっている為、フレッシュウィンドをつかむべく後続艇はどんどんオーバーセール覚悟で左に出て行った。僕達は絶好のポジションをキープし、残りのポートレグを消化していった・・・ハズだったが、上マークに近づく度に、オーバーセールしている集団がどんどん追い付き、そして抜いていった。たかだか10艇身風下にいるだけで、潮流の違いは甚だしい。
結局第一マークを回航する頃には、約25艇に抜かれ30位前後となった。「潮流は本当に恐ろしい」潮が強すぎて、マークが波をきって進んでいるようで、マークの横に来ても、なかなか通過できない。マークを回航できない。。。第一レースを終えて、改めて潮流をより意識したコースプランを練り直すようになった。
予選二日目は気を取り直して臨み、第3レースで4位フィニッシュ。4レース目も15位前後とまずまず。二日目が終わった時点で、決勝進出のボーダーライン上に自艇を含め多くの艇がひしめく大混戦となった。予選最終日も相変わらず左海面有利の状況は変わらなかったが、スタートラインが本部船有利に設定された為、悩んだが本部船側からのスタートを選んだ。しかし、アウター側からスタートした艇がぐんぐん先行し、結局スタート時のゲインをすぐに失ってしまった。
第6レースになると今度はスタート直後に大きく右にシフトし、本部船側からスタートした艇が前に出る結果となった。どちらにレースでも逆のコースを取ってしまい、順位を大きく落とす事となった。僕達はスタート時のゲインや潮流のイメージ等目の前の事に集中してしまい、レース全体を見れていなかった。もっとレースを大きな視野をもってレースを組み立てなければならない。
この3日間の結果、決勝はシルバーフリートでのレースとなった。予選と違い、今度は下げ潮でのレースとなり、また頭を切り替えてレースに臨まなければならなかった。風も毎日20ノット程度の安定した風で、シルバーフリートと言えど艇速が絶対に必要なコンディション。この決勝の4日間で学んだのは、艇のスピードを決めるのはジブトリムが非常に重要だという事。
クルーがジブトリムをする事で走るモードをスキッパーに指示する。この事は学生レベルでは絶対にできていない事だと思うし、世界のトップレベルの選手との差が一番出ている部分だろう。「船はクルーが走らせる!」今年のワールドは結果は悪かったが、本当に大事な事を学んだと思う。あとは、学んだ事を実践できるようにしっかり練習しよう。来年のワールド・そしてオリンピックに向けて・・・。
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